私たちの心の分裂(スプリット)とその克服 精神病理学で「分裂(スプリット)」という用語が用いられることがある。 同じ対象についての矛盾した空想が、私たちの心の中に同時に存在しながらそのことについては無自覚なままであることを指す。 そして、このような「分裂(スプリット)」を抱いている対象については、私たちは一貫性のある現実的な対応を取れなくなってしまう。 「原子力」について、私たちの心の中には、良いイメージ群(系列1)と悪いイメージ群(系列2)が分裂(スプリット)したままで存在している。それぞれのイメージ群の内部の空想上の対象のいくつかは、相互に自動的に結びつき、全体の空気や気分を形作っている。 系列1:「良い原子力」=「強大なエネルギーとそれを保持したい願望」=「国策と伝統の正しさと無謬性」=「経済的な優位性の確保」=「原発事故の否定的な影響、特に放射線による直接的な健康影響の否定」=「帰
「原子力ムラ」批判だけでは変わらない つい「原子力ムラ」という言葉を使い、それに厳しい批判の言葉を投げかけたくなる。 たとえば、賠償や除染・廃炉に今後どのような費用がかかったとしても、結局はそれを電気料として広く国民が負担することになり、電気事業者の権益は確保されるとの指摘がなされている。 そしてそのような方法で維持される経済力を背景に、前述したような原発事故の否定的な影響を小さく見せるようなキャンペーンが展開されているという憶測も行われることがある。 もしそうならば、電気事業者は原発事故によって適切な処罰を受けることなく、かえって影響力を増したことになる。しかしそれは誠に不遜な事態であり、厳しく糾弾しなければならない、そのように考えたくなる。 しかし、精神病理学の立場からは、その思考法を進め、その中に埋没する危険性にも意識的でありたい。「全て良い。問題ない」という感覚を「全て悪い。問題ば
「日本的ナルシシズム」という思考法 筆者は、昨年に『日本的ナルシシズムの罪』という本を上梓し、現代日本に蔓延する病理性について報告した。 そこでは「和を持って貴しとなす」という美徳についての誤解が行われ、狭い仲間内でのみ通用する都合のよい「想像」を共有することが人間関係において過度に重要視されてしまい、その想像と合わない現実を扱うことや、想像を共有しない他者との関係性を構築することがきわめて困難になるという特徴があると記載した。 具体例を挙げた方が分かりやすいだろう。 2011年の原発事故が起きるまで、ほとんどの日本人が共有していた原子力発電についての「安全神話」とそれによって維持されていた日本社会の連帯と安定が、その一つの現れである。 2011年の事故によって明らかになったのは、それが都合のよい想像だったのであり、その想像を強く共有したために私たちが「原子力発電所は事故を起こすかもしれな
ある老医師の「戦死」 2016年12月30日、福島県広野町にある高野病院の高野英男院長が火事で亡くなるという痛ましい事件が起きた。享年81。高野病院は2011年に事故を起こした東京電力福島第一原子力発電所から22kmの地点にある。 震災後は、病院にただ一人残った常勤医師として休むことなく診療に当たった。元来は精神科医であったため、震災前には一般的な救急患者の受診を受け入れてはいなかった。 しかし、周囲の病院が軒並み休業したため、高野病院が福島県双葉郡において診療を行う唯一の病院となってしまい、震災後には救急車で搬送される患者の受け入れも行うようになった。年間の当直回数が100回を超えたこともあったという。 生前の高野医師の姿はテレビでも放映され、その過酷な勤務内容と、次第に足腰が弱りテレビの前で転倒してしまうような姿も、全国で知られるところとなった。 しかしながら、その負担が大きく軽減され
爆笑問題の田中裕二さんは いつも考えていることがあるそうです。 それは、「猫はどうしてかわいいのか」。 最近ではその謎に迫る本を出し、 猫好き仲間とは、いつも 愛猫のチーちゃん、ネネちゃんの話で 盛り上がっているそうです。 そんな田中さんに、 猫好き乗組員のとが 猫の魅力をうかがってきました。 田中裕二さんのプロフィール 1965年東京生まれ。 1988年に太田光と「爆笑問題」を結成。 政治から芸能界まで様々な社会現象を斬る漫才は、若者だけでなく幅広い年齢層に支持されている。 現在、テレビ・ラジオのレギュラー番組に出演する他、雑誌の連載も手がけている。 また、タイタンライブにも毎回出演を続けている。 ふじた 『猫と田中』、おもしろかったです。 今回、この本を出そうと思われたのは、 どうしてでしょう。 田中 いや、これは、 ぼくは出そうと思ってない。 ゆーないと・ふじた (笑) 田中 編集の
偏差値70越えの名門私立中学に合格したことが話題となっている、“天才子役”の芦田愛菜。現在放送中のドキュメンタリードラマ『山田孝之のカンヌ映画祭』(テレビ東京系)に出演し、主演女優でもあり、マスコット的存在でもあり、物語のキーパーソンでもある役として活躍している。山田孝之がプロデューサーとしてカンヌ国際映画祭を目指すという、リアルかフェイクかわからない同番組。このカオスな世界観の中で、普段着の芦田がいる光景が絶妙なのだ。その“芦田愛菜がいる光景”の面白さについて考察してみたい。 同番組は、2015年に放送された『山田孝之の東京都北区赤羽』(テレビ東京系)を手がけた松江哲明監督と山下敦弘監督が再びタッグを組んだ、“山田孝之”シリーズ第二弾。山田が今までに大きな賞を受賞した事がないということで、「カンヌの1番のやつ」と称するカンヌ国際映画祭の最高賞“パルム・ドール”を取るため、山下監督と芦田と
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