「運気が下がるから会うのはやめたほうがいいぞ」。2018年の年末、いわゆる「ニート」の若者A君に会うことになり、そのことをある先輩に話すとこう押しとどめられた。ニートのA君は大手IT企業に勤める幹部の長男だ。当時26歳。この幹部の方とはプライベートを含めて親交があり、「息子を何とかしてくれないでしょうか」と託されたのである。 先輩の指摘はもっともだった。A君は仕事もせず、長く自宅に引きこもっている状態だった。言うまでもなく引きこもりは、大きな社会問題になっている。いわゆる8050問題や最近の犯罪などは、日本全体の脅威とさえいえる。引きこもる理由は様々だが、負のオーラに包まれている場合が多い。自己憐憫(れんびん)や責任転嫁といったネガティブな言動を聞くうちに、こちらがめいってしまうかもしれない。それでも頼られると何とかしたいと思う性分なので、ひとまずA君に会うことにした。 想定外だったのは、