前回の記事では,パラメトリック統計学に歩み入るための“お守り”として「確率変数」と「確率分布」を読者の皆さんにお渡ししました.観察されたデータという限られた情報源から,いかにして未知の母集団の属性を探ることができるのか.ある確率分布に従う確率変数という考え方は,母集団のふるまいをモデル化するためにパラメトリック統計学が提唱する基本方針といえます. 18世紀はじめにジャック・ベルヌーイによって打ち立てられた近代確率論は,偶然性に支配されたできごと(事象)を数学によって記述するという選択肢を研究者に選ばせました.それは同時に,得られた知見を数値化することによって客観性と普遍性をもたせるという知の歴史の大きな流れにも合致していたに違いありません. 前回導入した確率分布という概念にはもっと説明すべきことがらがたくさん残されています.コインやサイコロを投げることだけが確率分布が扱える問題ではありませ