「映画の映画」は多い。 が、《映画の観客》そのものをテーマにした映画は、寡聞にして知らない。 キャメロンが12年のブランクを経て到達したのは、《観客を主人公にした映画をつくる》という果敢な挑戦だった。 観客は映画館の椅子に座り、3Dメガネをかけ、映画の世界へと没入する。 主人公もまた、椅子に座り、器具をつけ、別の現実へと没入する。 ストーリーだけを切り取り、論評することもできる。キャメロン自身も「宇宙版『ダンス・ウィズ・ウルブズ』」とか言っている。また、ここで描かれている惑星パンドラなる世界が宮崎駿の影響を受けているのもあきらかで、それを指摘することもできる。 でも、この映画の本質はそこにはない。 ストーリーも、世界観も、何でもよかったのだと思う。 2時間40分の長尺にもかかわらず、エンドロールが流れはじめても、場内の観客は誰ひとりとして立ち上がろうとしなかった。 誰ひとりだ。 最近の洋画