「あいちトリエンナーレ2019」において、「表現の不自由展・その後」展示中止に抗議して改変されたモニカ・メイヤー《沈黙のClothline》(2019) 放任できない悪質言論 SNS上の誹謗中傷が人の精神を追い詰める、という問題が、リアリティ番組出演者の自殺という出来事をきっかけに社会全体の関心事となっている。これに法がどう対処すべきかについて、様々な視点からの議論が出されているが、これに伴って、「法的に許容されない『誹謗中傷』と、正当な『批判』との線引きをどう考えるか」、を確認・再考する必要が出てきた。この問題は、美術批評・文芸批評の分野にも直接に通じる問題である。 人を死に至らしめるほど精神的に追い詰める発言には刑事罰による規制を、という主張(A)があるいっぽうで、批判と誹謗中傷の間の線引きは難しく、一律に線引きをすることは難しい、という実情から、(刑事罰を含め)言論への法規制は難しい