私の本棚の一番取り出しやすいところに並べてある本の中のひとつに、こうの史代さんの漫画「この世界の片隅に」があります。上下2冊のこの本は、私にとっては戦争ものを描く作品に対する印象をがらっと変えたものでした。 それまで見て来た戦争や原爆を取り扱う作品では描かれている人たちがどこか8月15日に何が起こるかを知っているような、現代人の戦争に対する価値観と同じものを持ってる人がたくさんいるような、そして清く気高く生きている人たちを犠牲にしたような、そんな作り込まれている感、より悲惨なものに見せようとするような意図が見え隠れするものも多く、見ていて辛くなるものもたくさんでした。 でもここに描かれていたのは、当たり前に生きている普通の人たちで。 戦争と切り離されている訳ではなくまっただ中で生きているのだけど、でも私たちと同じように笑ったり怒ったり泣いたりしている主人公のすずたち。当たり前の日常の中に戦