明治維新の後、新しい国創りのモデルを求めて欧米諸国に歴訪した岩倉使節団が最も感銘を受けたのは、ドイツ帝国宰相ビスマルクとの会見だったと言われている。明治日本のグランドデザイナー大久保利通や、その衣鉢を受け継いだ伊藤博文は、常に日本のビスマルクたらんと心がけた。こうして、ビスマルクの領導したプロイセンが、明治日本のモデルとなったのである。 本書は、そのビスマルクの評伝である。ビスマルクについては、既に数多くの著作が書かれているが、著者スタインバーグは、ビスマルク本人の膨大な著述はもとより、ビスマルクに関わった数多くの同時代人の日記や書簡を証人として出廷させ、この巨大で(身長は優に190cmを超え、体重も軽く120kgを超えていた)複雑な宰相の全貌を、浮かび上がらせようと試みた。 ところで、ビスマルクほど毀誉褒貶の激しい人物は、史上でも稀である。宰相就任後、わずか8年足らずでドイツの統一を成し