正義の門前:法のオートポイエーシスと脱構築 馬場靖雄 At the Gate Called "Justice" BABA, Yasuo 4.神の雑種 「法の力」第二部は一転して、ベンヤミンの手になるあの謎めいたテクスト「暴力批判論」(Benjamin[1921=1969])の、ほとんど逐語的な読解より成っている。読解というよりも、むしろ迷路のなかに迷路を造るといった趣を呈するこの論述のすべての含意を引き出すことなど、むろん不可能である。ここではごく図式的に整理した上で、われわれの議論に関わる論点のみを抽出することにしよう。 ベンヤミンは法と暴力の不可分な関係を一般的に指摘したあとで、法に含まれる暴力を二種類に区別する。すなち、現存の法秩序を再生産する「法維持的暴力」と、既存の秩序を宙づりにし、空白状態のなかから新たな秩序を立ち上げる「法措定的暴力」である。いうまでもなく後者は前者に比べては
<高橋順一(たかはしじゅんいち):早稲田大学教授> 今年三月、社会評論社から『ヴァルター・ベンヤミン解読』を上梓しました。一九八四年から二〇〇七年にわたって折に触れて書いてきたベンヤミンに関わる文章を集めて作った本です、ぼくのベンヤミンの読み方はかなり偏った問題意識に基づいていると思います。そういう偏ったベンヤミンの読み方を本にしてもはたして客観的な評価に耐えられるかどうか、正直なところ自信はありませんでした。でもベンヤミンを若い人たちに読んでもらうためのひとつの補助線くらいにはなるだろうと考え、最終的に本を出してもらうことを決意しました。この本のあとがきにも書きましたが、ベンヤミンを読むことは、勝者だけがのさばる世界をひっくり返すための武器を手に入れることにつながります。この本でいちばん伝えたかったのがそれです。あらゆる希望も可能性も失われてしまったからこそ、希望を、可能性をあらしめねば
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