『漫画をめくる冒険・上巻』イズミノウユキ これは、素晴らしく面白いマンガ批評となっている。 マンガをいかに精読するか、という一つの方法論を提示してくれると同時に、そのように精読することによって、読みそのものが変化する、という批評のダイナミズムそのものが示されている。 批評理論や映画理論なども巧みに織り込みつつ、さらにはミラーニューロンとかダマシオなんて脳神経科学の話などもこの中ではなされている。もちろん、脳科学の話をマンガ論の中でしてもいいのかとも思うわけだが、うまい具合に説明の道具としてしまっていて、その使い方は巧みである。 さて、本題は、視点の問題である*1。 一体だれの視点で描かれているか、ということを、コマ単位で問題化して、マンガを読んでいくのである。 ある登場人物が視ているものを、読者が見るという構造を、マンガは取っている。そしてその構造の表現方法も、いくつかに分けられる。 マン