ひきこもりになったきっかけ バタン。午前4時ごろ、大阪府内のマンション一室に冷蔵庫の扉が閉まる音が響く。台所にいるのは、ひきこもって昼夜が逆転している長男(36)。おなかをすかせて食べ物を探している。 この音に母親(62)は寝室で気づく。一日2食を用意するほか、牛丼の具などの冷凍食品、焼きそばのカップ麺などの補充を欠かさない。 自立を促すためには生活支援を減らすべきだとの考えがあることは知っているが、「私にはできない、食を断てば、親子の縁も切れてしまう気がする」。母親はそう話した。そして沈黙の後、「そんなむごいことできますか」と語気を強めた。食料が見つからず困った息子の後ろ姿を想像したという。 長男がひきこもるとは、想像すらしていなかった。友人が自転車のカギをなくせば、真っ暗になるまで捜す。性格も穏やかで小中高と友人に囲まれ、学生時代は東京でルームシェア。ところが就活の失敗を機にひ