<再起を目指して> 家族に今回の破たんについては一切伝えていなかった。どんな言葉が長男のメールにつづられているのか、黒木には想像ができなかった。緊張しながらメールを開く。息子の言葉に驚いた。いつの間にか大人になっていたことを感じ、なんとも言いえぬ感動がわきおこってきた。息子は地銀への就職を希望していた。破たんを記者会見で知り、希望する就職は適わなくなったことを知ったに違いない。さらにひょっとしたディックスクロキへの就職も考えていたかもしれないが、その道も断たれたと感じたはずだ。けれども、文面に怨嗟の情は一切なかった。ただただ疲れた父をねぎらう言葉で満ちていたのである。 このメールのおかげで、破たん発表後も処理にまい進することができた。債務の整理も相手のことを第一に考えて、できるかぎりのことをした。その結果、連鎖倒産を発生させることはなかった。支援企業も見つけて、ディックスクロキの看板を残す