歓喜に沸く群衆のなかを、オープンカー型の教皇専用車で通り抜ける。サンピエトロ広場で行われる水曜恒例の一般謁見で。(Photo by Dave Yoder / National Geographic) 「すぐにでも変革を起こしたい」。 2013年5月下旬のある朝、教皇フランシスコは友人たちにこう話した。南米アルゼンチン出身の無名のホルヘ・マリオ・ベルゴリオ枢機卿がバチカンのコンクラーベ(教皇選挙)で教皇に選出され、新教皇フランシスコとなり一躍時の人になってから2カ月ほどが過ぎた日のことだ。 バチカンの城壁内にある教皇の質素な居所「聖マルタの家」のリビングで、教皇は「これからが大変だ」と旧友たちに打ち明けた。宗教事業協会(通称・バチカン銀行)の金融不祥事、教皇庁を堕落させている欲深な官僚たち、バチカン上層部の児童性的虐待事件などが次々と明るみに出る事態……。