仰臥漫録 (その1)の続きのエントリである.だいぶ時間が経ってしまった. 私の個人的な話になるのだが,いつも,仰臥漫録を読み終えてしばらくしてから心に残るのは,律という女性の存在なのである.それは,漱石の「坊っちゃん」を読み終えたとき,清という老女の存在が忘れられないものになっているのと似ている. 律は,子規の妹である.律がどんな女性であったか,それは,一方的な観点からではあるものの,子規の写実的な記述が余すところなく伝えている. 律は強情なり 人間に向つて冷淡なり 特に男に向つて shy なり 彼(注: 律のこと)は到底配偶者として世に立つ能(あた)はざるなり しかもその事が原因となりて彼は終(つい)に兄の看病人としてなりをはれり (中略) 律に勝(まさ)る所の看護婦即ち律が為すだけの事を為し得る看護婦あるべきに非ず (中略) しかして彼は看護婦が請求するだけの看護料の十分の一だも費(つ