小説家のすべてはその処女作にあるということはよく言われるが,そのような小説家の一人として私が思い浮かべる山崎豊子について,昨年,暖簾(山崎豊子)というエントリを書いた.このような,作家とその処女作については,他にもいろいろと思い浮かべる小説家はいるのだが,その一人として,新田次郎とその処女作「強力伝」について,次にエントリを書くつもりだった(もう半年も過ぎてしまったが).しかし,最近,家族や人生についていろいろと考えることもあり,予定を変えて,新田次郎の「小説に書けなかった自伝」を読んで思うことを,まとまりなく書いてみたい. 新田次郎は,本名が藤原寛人,藤原正彦先生(そのエッセイ「数学者の言葉では」については以前本ブログでエントリを書いた)の実父であり,その夫人,藤原ていもまた有名な作家である.代表作として,映画化もされた「八甲田山死の彷徨」などがあり,いわゆる山岳小説家として知られている