映画館に着くまでぜんぜん別の本を読んでいて、ネオリベがどうとか社会システムがどうとか考えていたので、さあこれからまったく違う世界の始まりだなと思いながら、予想外にがらんとした館の座席にひとり沈み込んだ。ところが、香川照之演じる男が会社の総務課長でいきなりリストラされる話から始まったので、「なんだつながってる」と驚くことになった。しかも、新たな派遣人材としてオフィスに現れたのは、大連からきたいかにもな中国女性で、日本語も流暢に自らをPRする。かわりに香川の総務課長は、「佐々木さん、あなたはこの会社のために何ができますか」(趣旨)と、きょうび就職の話になると必ず聞かされるクソ台詞とともにポイ捨てされるのだ。 この10年ほどの社会をいくらか自覚的に生活してきて私は、20世紀と21世紀では世界が本当に違ってしまったと徐々に確信するようになった(私だけでないのはもちろんだ)。そうした同時代性の基盤を