タグ

ブックマーク / bachihebi.hatenablog.com (12)

  • GGR(ごんぎつねリローデッド) - 回転図誌

    これは、私(わたし)が小さいときに、村の茂平(もへい)というおじいさんからきいたお話です。 むかしは、私たちの村のちかくの、中山(なかやま)というところに小さなお城があって、中山さまというおとのさまが、おられたそうです。 その中山から、少しはなれた山の中に、「ごん狐(ぎつね)」という狐がいました。ごんは、一人(ひとり)ぼっちの小狐で、しだの一ぱいしげった森の中に穴をほって住んでいました。そして、夜でも昼でも、あたりの村へ出てきて、いたずらばかりしました。 新美南吉 ごん狐 トゥルーEND 「ごん、お前(まい)だったのか。いつも栗をくれたのは」 ごんは、ぐったりと目をつぶったまま、うなずきました。 兵十は火縄銃をばたりと、とり落しました。青い煙が、まだ筒口(つつぐち)から細く出ていました。 新美南吉 ごん狐 ifルート(バッド) 母が逝ったことで天涯孤独になってしまった兵十。 失意のどん底に

    GGR(ごんぎつねリローデッド) - 回転図誌
  • ザ・セイント・オブ・ハイランド - 回転図誌

    その頃わたしは軌道エレベータ協会に務めていて、主に施設の修復・保全を担当する部署にいた。 人類の叡智を集めて築かれた巨大な柱も、流石に築百二十年ともなるとあちこち経年劣化が目立つ。お蔭でわたしの部署は常に仕事に追われており、一年の大半を上層で過ごさざるを得なかった。 そんなわけでわたしは迷うことなく、半年振りに手に入れた休暇を地上でゆっくり過ごすことに決めたのだった。というより前々から「今度休みが取れたら下に降りよう」と決心していたのだ。 久しぶりに故郷に顔を出そうか、それともどこか旅行にでも行こうか。そんな楽しい迷い方をしながら、わたしはエレベータの二等客室に乗り込んだ。安いだけあって普段は大抵満席の二等だが、この時は時期外れを狙ったのが功を奏して乗客も疎ら、まずまず落ち着いた旅になりそうだった。走り回ったり泣き喚いたりしそうな小さい子供がいないのも幸運だった。 手荷物を収納して席に落ち

    ザ・セイント・オブ・ハイランド - 回転図誌
    murashit
    murashit 2010/12/31
    高野聖
  • 拡張学級 - 回転図誌

    クラスメイトの小早川が帰らぬ人となった。 自転車でトラックと正面衝突して即死だったらしい。 そりゃ当たり前で、自転車じゃあトラックと相撲したって勝てるはずがない。ましてや非力な小学生の身では。 そんなこと人だって知っていたはずだけど、その日はどういうわけかそれを実験したいと思ってしまったんだろう。知らないけど。 三日後にクラスみんなでお葬式に行った。 お棺の蓋はずっと閉められていたから、顔は見られなかった。 「みんな、小早川君のことを忘れないでいてあげようね」 担任の内田先生は涙ぐんでそんなことを言った。 言われなくたって、みんなだって小早川のことを忘れてやろうなんて思っていない。 特別いい奴でもなかったけど、悪い奴でもなかった。 夏休みのプールサイドでいきなり水着を下ろされた恨みはまだ忘れていないが、宿題をやり忘れた時に写させてもらった恩だってある。 クラスメイトとしてお互い楽しく過ご

    拡張学級 - 回転図誌
  • 拡張家族 - 回転図誌

    やはり、携帯電話に何かあるような気がした。 なぜだか気になって仕方がなかった。 私の物ではない。死んだ知人の持ち物である。 順を追って話そう。 高校の同級生だった浦辺が死んだ、という報せが警察から来た。 なぜ私に、と聞くと浦辺には連絡のつく親類がいないためだという返事だった。 遺品の中から私の連絡先が見つかったらしい。 私にしても浦辺に会ったのはもう三年くらい前が最後なので些か面らう。 その時にも彼は一人暮らしをしていたようだが、最期まで孤独だったということなのだろうか。 もう少し連絡を取っておけばよかったな、と今更ながら後悔しつつ、詳しい話を聞きに警察署へ行くことになった。 出向いた私を迎えたのは初老の穏やかな刑事だった。 「浦辺さんは自宅で発見されましてね。新聞が新聞受けに溜まっていることに疑問を持った管理人が通報してきました。この猛暑ですが、ずっとエアコンが動いていたようで……そこ

    拡張家族 - 回転図誌
  • あとがきにかえて / 記憶の断片が行動を左右することは意外によくある - 回転図誌

    最後の写真をblogに掲載してから、bachihebi(仮)は長い溜息をついた。 ――やっと終わった。 達成感と言える程の感動はない。 写真を一枚撮って掲載するだけの単純な作業である。毎日続けたとは言え、たったの四ヶ月足らず。 そもそも、blogの内容は自分のモノだ。望み通り始めて、望み通り締め括ることができた。それ以上の経過は望むべくもない。 ただ、気楽だったというわけでもない。写真に添える文章が思い浮かばないまま、二時間以上も編集画面を凝視していたことは一度や二度ではない。 それなりに真剣だったのである。途中で止めようとは一度も思わなかった。心配だったのは不測の事態で中断してしまうことであり、自分の意思で止めようとする事は考えられなかった。 何故だろうか。何故、この企画を始めようと思ったのだろうか。 元は、稲の生育を毎日観察したら面白いのではないか、という位の発想だった。 だが果たして

    あとがきにかえて / 記憶の断片が行動を左右することは意外によくある - 回転図誌
  • 千の風になるためには風葬に限る百六日目 - 回転図誌

    盆に帰省した私を、兄が車で迎えに来た。その隣に兄嫁の姿を見つけて、思わず身を硬くする。 正直、兄嫁は苦手だった。 彼女は私の高校時代の二年上の先輩で、同じ部活に所属していた。華やかな容貌ではないけれど、柔らかい雰囲気の女性だった。 入部当初から、彼女はあれこれ世話を焼いてくれた。それは私だけのことではなくて、他の部員皆に対してそうだった。要するに、世話好きな女性だったのだ。 他の部員達からは随分信頼されていたが、私はそうではなかった。こちらの気持には頓着せず、ずかずかと他人の領域に踏み込んでくる。誰にも言わなかったが、そんな所が苦手だった。 彼女が傍にいると、何となく落ち着かない気分になった。居心地が悪いという訳ではないが、据わりの悪い心地がしてならなかった。 何でそこまで彼女に反応してしまうのか――それすらよく判らなかった。 だから、一年経って先輩が卒業した時には、密かに安心したことを良

    千の風になるためには風葬に限る百六日目 - 回転図誌
  • 五十五日目の紅茶 - 回転図誌

    文学少女は文学のためなら死も厭わない 文学少女は人命より文学を優先させる覚悟がある 文学少女はを開いたまま伏せておく奴を許さない 文学少女は睡眠中にもが読める 文学少女は事中にはを読まない、が汚れるから 文学少女は野外で読書などしない、が日焼けするから 文学少女は携帯しているを全て手放すとかなり身軽になる その結果移動速度が三倍、跳躍力が二倍になる 文学少女の起源は四大文明にまで遡ることができる 文学少女は毎日鏡の前で文豪の写真と同じポーズを取ってみたりする 文学少女は代を捻出するために髪は自分で切る 文学少女は『平家物語』くらい余裕で暗誦する 時々琵琶も弾いているところを目撃される 文学少女は砕けない 文学少女だって時には素手で殴り合ったりする 文学少女は料理は殆どしないがレシピだけは沢山覚えている 文学少女と言えどバレンタインにはチョコレートくらい用意する そして父の墓

    五十五日目の紅茶 - 回転図誌
  • ヴァレンタイン異伝 - 回転図誌

    2月14日はいわゆる聖人の日、聖ヴァレンタインの日である。ご存知のように邦ではこの記念日は異性に贈り物をする習慣として定着しており、料品店や百貨店ではチョコレートがここぞとばかりに陳列される。商業イベントとしても重要であることは言を俟たない。 しかしながらヴァレンタイン、あるいはウァレンティヌスと呼ばれる聖人の生涯については、記念日の知名度に反して驚くほど知られていない。一般的にはむしろチョコレートを贈る習慣こそが主体くらいに考えられており、聖人については単なる名目となっているのが実情であろう。 しかしこれは彼について知られていないというより、記録の乏しさゆえに明らかでない部分が多い、と言ったほうが正確でもあろう。その実在すら疑う説もあり、ゆえにカトリック教会ではこの人物の記念日を定めていないのである。総山であるローマでさえその様子であるから、キリスト教の盛んでない日では尚更である

    ヴァレンタイン異伝 - 回転図誌
  • セドナ - 回転図誌

    偶の休みだったので午頃迄寝ていようと思って朝飯もわずにぐうたらしていたらキムラが息せき切ってやってきた。折角気分よく怠惰を満喫していたところを邪魔されたので頗る不機嫌に応対したのだが、流石はキムラだけあってこちらの機嫌を意に介す素振りなど微塵もない。興奮した様子のキムラが言うには近所の浜に鯨が打ち上げられたという。正直なところ間抜けな鯨などより先程の惰眠を継続したかったところだが、キムラは一緒に見に行こうぜと主張して譲らない。この男とは中学校以来の付き合いで所謂腐れ縁という奴だが、初めて会った頃からこういう具合に相手の事情を鑑みようとしない所はずっと変わっていない。多分死ぬまでこのままなのだろうと思う。だから諦めて鯨見物に同行することにした。 同行することにはしたのだが簡単にはこちらの機嫌も好くはならないので連れ立った道すがら鯨について悪し様に罵ってやることにした。キムラを罵らないのはそ

    セドナ - 回転図誌
  • 残照 - 回転図誌

    谷の外は風がつよいです。 今まで住んでいた村は谷底にあるおかげであまり風が吹きこまない場所でしたが、もうわたしは戻れない。これからはこの風のつよい、何もないところで暮してゆかねばならないのでしょう。すぐに死んでしまうかもしれない。 わたしが村を出たのは、病気のせいです。 わたしの病気ではない。村で流行った病気です。何人も死んでいます。 最初に病気で死んだのは父さんと母さんでした。だから病気を持ちこんだのは父さん母さんだということになりました。 わたし自身は病気にはかかっていないけれど、村長が、病気を持ちこんだ者の子は村に置いておけない、と言いました。 他の人たちもわたしのことを邪魔なもののように見ます。わたしがあこがれていたあの人もやっぱりそんな目をするので、悲しくなりました。 わたしが村を出れば、病気の人もよくなるだろうか。よくなればいいと思います。 谷の外はとても明るい。村には昼間もあ

    残照 - 回転図誌
  • 切腹探偵 - 回転図誌

    待望の第一子が元気に産声を上げたとき、隣室に控えていた原田新左衛門は思わず袴を握り締めた。呼吸は最前からずっと詰めたままである。すぐに下女が彼の元に駆けつけて告げた。 ――男の子に御座います―― 新左衛門は溜息を長々と吐いた。 原田家は周囲からは不思議な家系として認識されていた。 まず何の御役についているのかがわからない。当主の新左衛門が何らかの公務に就いているところを見たという者がいないのだ。新左衛門の姿が目撃されるのは、決まって城下の水辺で独り釣り糸を垂れている処であったり、自宅の庭で畑を耕している処であったりした。しかも昔を知る者に言わせれば、こうした暮らし振りは何も当代に限ったことでは無いという。原田家の先代も、更に聞くところにはそのまた前も、ずっとそんな調子だったとのことである。中には原田家は浪人なのではないかと訝る声もあったが、別の者の言う事には禄は確実に与えられている筈である

    切腹探偵 - 回転図誌
  • さいごに これがあたしたちのリアル きみにはわかっているはず - 回転図誌

    そして、そう考えると、十七歳の少年に彼女ができるという状況は、実は、いわゆる「ロボット・アニメ」における状況に近いのではないか、と思うのです。少年が、巨大ロボットという圧倒的な存在の操縦者となることによって始まる、歓喜と戦慄の日々。少年が、女の子という圧倒的な存在と両想いになることによって始まる、喜びと戸惑いの日々。少年が未知なるものと出会い、新しく開かれ始めた世界の中で右往左往するという点において、この二つは似ているのではないか。 植芝理一『謎の彼女X』一巻p.206 「じゃあ彼女にもスーパー系彼女とリアル系彼女といるんだろうか」 「スーパー系彼女は火力と装甲が高いのか。リアル系は運動性が高くて」 「いや、スーパー系はヒーロー性というかキャラクター性があるんじゃないの。変わった語尾とか付いてるとそれっぽい」 「あー、萌え系は確かにスーパー系っぽい。逆にゲッターロボとかも擬人化されると語尾

    さいごに これがあたしたちのリアル きみにはわかっているはず - 回転図誌
  • 1