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ブックマーク / morningrain.hatenablog.com (13)

  • 安達貴教『21世紀の市場と競争』 - 西東京日記 IN はてな

    副題は「デジタル経済・プラットフォーム・不完全競争」、GoogleAppleAmazonなどの巨大企業が君臨するデジタル経済において、その状況とあるべき競争政策を経済学の観点から分析したになります。 基的にGoogleのような独占企業が出現すれば市場は歪んでしまうわけですが、例えば、Facebookが強すぎるからと言ってFacebookを分割すればそれがユーザーにとって良いことかというと疑問があります。Facebookは巨大だからこそいろいろな人とつながれって便利だという面もあるからです。 書はこうした問題に対して、「不完全競争市場こそがスタンダードなのだ」という切り口から迫っていきます。 このように書くと難しそうに思えるかもしれませんが、全体的に読み物のような形に仕上がっており、また、高校の教科書の記述などを拾いながら書かれていて、経済学にそれほど詳しくない人でも読めるものにな

    安達貴教『21世紀の市場と競争』 - 西東京日記 IN はてな
    murashit
    murashit 2024/08/20
  • トマ・ピケティ『資本とイデオロギー』 - 西東京日記 IN はてな

    書を「『21世紀の資』がベストセラーになったピケティが、現代の格差の問題とそれに対する処方箋を示した」という形で理解している人もいるかもしれません。 それは決して間違いではないのですが、書は、そのために人類社会で普遍的に見られる聖職者、貴族、平民の「三層社会」から説き始め、ヨーロッパだけではなく中国やインド、そしてイランやブラジルの歴史もとり上げるという壮大さで、参考文献とかも入れると1000ページを超えるボリュームになっています。 ここまでくるとなかなか通読することは難しいわけですが(自分も通勤時に持ち運べないので自宅のみで読んで3ヶ月近くかかった)、それでも読み通す価値のある1冊です。 書で打ち出された有名な概念に「バラモン左翼」という、左派政党を支持し、そこに影響を与えている高学歴者を指し示すものがあるのですが、なぜそれが「バラモン」なのか? そして、書のタイトルに「イデ

    トマ・ピケティ『資本とイデオロギー』 - 西東京日記 IN はてな
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    murashit 2024/01/18
  • 前田正子・安藤道人『母の壁』 - 西東京日記 IN はてな

    待機児童問題が深刻化していた2017年に、都市郊外のA市で行った母親へのアンケートをもとにした。 著者の一人の前田正子は中公新書から『保育園問題』というを出しており、もう1人の著者の安藤道人は公共経済学を専門とする経済学者になります。 ですから、アンケートを元にして問題の計量的な分析などを行ったかとも思いますが、書の中心になっているのは母親たちが寄せたアンケートの自由記述です。 ここに書かれている母親たちの訴えをとり上げながら、母親たちが直面する「保育の壁」「家庭の壁」「職場の壁」という3つの壁を取り出しています。 このように図式的に整理することも可能ですが、書の売りは何といっても母親たちの実際の声だと思いますので、書はそうした声を引用しながら「公平な制度の難しさ」を中心に見てみたいと思います。 目次は以下の通り。 はじめに 母親たちの肉声 第1章 母を追いつめる三つの壁 第2

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  • 岸政彦/梶谷懐編著『所有とは何か』 - 西東京日記 IN はてな

    私たちはさまざまなものを「所有」し、その権利は人権の一部(財産権)として保護されています。「所有」は資主義のキーになる概念でもあります。 同時に、サブスクやシェア・エコノミーの流行などに見られるように、従来の「所有」では捉えきれない現象も生まれています。 書は、この「所有」の問題について研究者が集まって書いたなのですが、まずは冒頭の岸政彦とつづく小川さやかの論文で、私たちが生活していく上でかなり強い足場として認識している「所有」が、そうした足場になっていない社会の様子が紹介され、その後に経済学歴史学や社会学の立場から「所有」が論じられています。 「所有」だけではなく、「制度」や「秩序」といったものについても考えが広がる、面白い内容になっています。 目次は以下の通り。 第1章 所有と規範―戦後沖縄の社会変動と所有権の再編(岸政彦) 第2章 手放すことで自己を打ち立てる―タンザニアのイ

    岸政彦/梶谷懐編著『所有とは何か』 - 西東京日記 IN はてな
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    murashit 2023/08/07
  • オリヴィエ・ブランシャール『21世紀の財政政策』 - 西東京日記 IN はてな

    現在、欧米は物価上昇に対応するために利上げを続けていますが、それまでは日を含めた先進国の多くで低金利政策がとられていました。 そうした中で、財政政策や財政赤字に対する考えを変える必要があるのではないかというのが書の主張になります。 ローレンス・サマーズ、ベン・バーナンキ、ポール・クルーグマン、アルヴィン・ハンセン著/山形浩生編訳『景気の回復が感じられないのはなぜか』を読んだ人であれば、コロナ前の世界について、低金利で株価も上がっているのに投資は十分に回復していない「長期停滞」の時代だったのではないか?という議論を知っていると思いますが、書はその「長期停滞」時代の財政論といった形です。 morningrain.hatenablog.com 基的な考えは、(r(実質安全金利)-g(実質経済成長率))がマイナスであるならば、財政政策や財政赤字には今までとは違った考えが求められるだろうとい

    オリヴィエ・ブランシャール『21世紀の財政政策』 - 西東京日記 IN はてな
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    murashit 2023/07/18
    あいかわらずマクロのことぜんぜんわからん
  • 東島雅昌『民主主義を装う権威主義』 - 西東京日記 IN はてな

    「民主主義」の反対となる政治体制というと「独裁」が思い浮かびますが、近年の世界では金正恩の北朝鮮のようなわかりやすい「独裁」は少なくなっています。 多くの国で選挙が行われており、一応、政権交代の可能性があるかのように思えますが、実際は政権交代の可能性はほぼ潰されているような体制の国がけっこうあります。 独裁からこういった選挙があるけど政権交代の可能性がほぼない国までひっくるめて政治学では「権威主義」、「権威主義体制」と言い、近年では今井真士『権威主義体制と政治制度』、エリカ・フランツ『権威主義』のように権威主義を分析したや、川中豪『競争と秩序』のように民主主義と権威主義の狭間で動くような国(東南アジアの国々)を分析したも出ています。 こうした中で書は権威主義体制の戦略、特に権威主義体制における選挙の利用について分析したになります。 権威主義体制に選挙は必要ないような気もしますが、先

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    murashit 2023/06/04
    トロピコでやったことあるやつだ
  • 玉手慎太郎『公衆衛生の倫理学』 - 西東京日記 IN はてな

    新型コロナウイルスの感染拡大の中で、まさに書のタイトルとなっている「公衆衛生の倫理学」が問われました。外出禁止やマスクの着用強制は正当化できるのか? 感染対策のためにどこまでプライバシーを把握・公開していいのか? など、さまざまな問題が浮上しました。 そういった意味で書はまさにホットなトピックを扱っているわけですが、書の特徴は、この問題に対して、思想系のだと必ずとり上げるであろうフーコーの「生権力」の概念を使わずに(最後に使わなかった理由も書いてある)、経済学政治哲学よりの立場からアプローチしている点です。 そのため、何か大きなキーワードを持ち出すのではなく、個別の問題について具体的に検討しながらそこに潜む倫理的な問題を取り出すという形で議論が展開しています。 そして、その議論の過程が明解でわかりやすいのが書の良い点になります。 「これが答えだ!」的な話はありませんが、問題点が

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    murashit 2023/02/13
  • 2022年の本 - 西東京日記 IN はてな

    気がつけば今年もあと僅か。というわけで恒例の今年のです。 今年は小説に関しては、朝早起きしなくちゃならない日が多かったので寝る前に読めず+あんまり当たりを引けずで、ほとんど紹介できないですが、それ以外のに関しては面白いものを読めたと思います。 例年は小説には順位をつけているのですが、今年はつけるほど読まなかったこともあり、小説小説以外も読んだ順で並べています。 ちなみに2022年の新書については別ブログにまとめてあります。 blog.livedoor.jp 小説以外の 筒井淳也『社会学』 「役に立つ/立たない」の次元で考えると、自然科学に比べて社会科学は分が悪いかもしれませんし、社会科学の中でも、さまざまなナッジを駆使する行動経済学や、あるいは政策効果を測ることのできる因果推論に比べると、社会学は「役に立たない」かもしれませんが、「それでも社会学にはどんな意味があるの?」という問題

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    murashit 2023/01/11
  • リン・ハント『人権を創造する』 - 西東京日記 IN はてな

    タイトルからして面白そうだなと思っていたですが、今年になって11年ぶりに重版されたのを機に読んでみました。 「人権」というのは、今生きている人間にとって欠かせないものだと認識されていながら、ある時代になるまでは影も形もなかったという不思議なものです。 中学の公民や高校の政治経済の授業では、社会契約説の思想家たちの、「たとえ国家がなかったとしても、すべての人間には一定の権利・自然権があるはずでしょ」という考えが、「人権」という考えに発展し、アメリカ独立革命やフランス革命で政府設立の目的の基礎として吸えられた、といった形で説明していますが、そもそも社会契約説が登場する前には「すべての人間には一定の権利があるはずでしょ」という議論は受け入れられなかったと思うのです。 こうした謎に1つの答えを与えてくれるのが書です。 人権というと、どうしても法的な議論が思い起こされますが、書が注目するのは「

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    murashit 2022/05/30
  • 渡邉有希乃 『競争入札は合理的か』 - 西東京日記 IN はてな

    公共事業では、それを施工する業者を入札で決めることが一般的です。多くの業者が参加して、その中で最安を提示した業者がその工事を落札するわけです。 ところが、日の公共事業では指名競争入札という形で、発注側が入札できる業者をあらかじめ指定したり、地方自治体では最低制限価格制度という形で一定以下の価格を示した業者を失格にするしくみもあります。 なぜ、このような制度があるのでしょうか? すぐに思いつくのは「利権」の存在です。一般競争入札よりもメンバーが限られている指名競争入札の方が談合などはしやすいでしょうし、最低制限価格制度もそれを教えて業者から賄賂を得るといったことが考えられます。 実際、90年代にはいわゆる「ゼネコンの汚職」が明るみに出て、入札制度の改革が行われたわけですが、それでも指名競争入札や最低制限価格制度はいまだに残っています。 書は、こうした考えに対して、指名競争入札や最低制限価

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  • デイヴィッド・ガーランド『福祉国家』 - 西東京日記 IN はてな

    ミュデ+カルトワッセル『ポピュリズム』やエリカ・フランツ『権威主義』と同じくオックスフォード大学出版会のA Very Short Introductionsシリーズの一冊で、同じ白水社からの出版になります(『ポピュリズム』はハードカバーで『権威主義』と書はソフトカバー)。 著者は、スコットランドに生まれ現在はアメリカのニューヨーク大学で教えている犯罪や刑罰の歴史を研究する社会学者です。 「なぜ、そのような人が福祉国家について論じるのか?」と思う人も多いでしょうが、書を読むと、著者が福祉国家をかなり広いもの、現代の社会を安定させる上で必要不可欠なものだと考えていることがわかり、その疑問もとけてくると思います。 目次は以下の通り。 第1章 福祉国家とは何か 第2章 福祉国家以前 第3章 福祉国家の誕生 第4章 福祉国家1.0 第5章 多様性 第6章 問題点 第7章 新自由主義と福祉国家2.

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    murashit 2021/12/06
  • スーパークレイジー君の当選によせて - 西東京日記 IN はてな

    2021年1月31日の埼玉県戸田市の市議会議員選挙(定数26)において、2020年の都知事選でもそのパフォーマンスが話題なったスーパークレイジー君こと西誠氏が25番目の912票の得票で初当選しました(政治家としてもスーパークレイジー君として活動するとのことなので、以下もスーパークレイジー君で)。 都知事選では「百合子か、俺か」のキャッチフレーズやそのパフォーマンスからイロモノ候補かと思っていたのですが、政見放送を見たら非常に真面目な主張をしていて驚いた記憶があります。 今回の当選を受けて、マスコミでも話題を集めていますが、今回のスーパークレイジー君の当選には「驚いた」「ウケる」といった要素だけではなく、日の選挙や民主主義を考える上での重要な問題が含まれていると考えるので、以下、2つの面から考えてみたいと思います。 1. 日の地方議会の選挙制度の問題 今回の戸田市議会議員選挙の結果は以

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  •  前田健太郎『市民を雇わない国家』 - 西東京日記 IN はてな

    それは、ある研究会での(城山英明)先生おご発言である。その日のテーマは、原子力政策だったと記憶している。詳しい文脈は覚えていないが、原子力安全規制に携わる人員は日に比べてアメリカの方が圧倒的に多い。その意味でアメリカは案外大きな政府である、という先生のご指摘が筆者には大変印象的だった。気になって調べてみると、原子力行政に限らず、アメリカは日よりも公務員が多い国だった。それまで筆者はアメリカの方が官僚制の権力が弱く、小さな政府なのではないかと思っていただけに、この事実は極めて反直観的であった。そして、なぜ日では公務員がこれほど少ないのか、その理由が知りたくなった。(294p) これはこのの「あとがき」に書かれている文章ですが、確かに「日公務員アメリカよりも少ない」と聞くと、「えっ?」と思う人も多いでしょう。アメリカは「小さな政府」であり、それに比べると日には肥大化した官僚機構

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