患者さんの話を聞くことは医療者の基本的なかかわりです。しかし最近の研究では,半数以上の医療者が患者さんに受診の理由を尋ねる機会を設けておらず,また尋ねたとしても患者さんの話を途中で中断させてしまうことが報告されています1)。この報告によると医療者が患者さんの話を遮るタイミングは開始から3~234秒(中央値:11秒)でした。話を遮ることは正確な診断と治療のために必要な場合もあります2)が,少なくとも患者さんの話を医療者が数秒聞いただけで遮ってしまう場合は双方にとって良い結果にならないでしょう。医療者と患者さんのコミュニケーション不足は再入院のリスク因子の一つだとする報告もあります3)。 そこで本稿では医療者が陥りがちな,患者さんとの初期段階での関係悪化を引き起こす,コミュニケーションの6つの罠(表)4)を紹介します。 医療者が患者さんとの面接の初期段階を単なる情報収集と考えて,アセスメントの
