初の前向きな兆候がとらえられた 宇宙には見ることも触れることもできない暗黒物質(ダークマター)があって,他の物体を引き寄せる重力によってのみ,その存在を示している。この謎の物質の正体を探る過去数十年の試みは,暗黒物質が「何ではないか」を明らかにする繰り返しとなり,候補とされた可能性がしだいに除外され,物理学者は不安をつのらせている。最後の候補が否定されたらどうなるのか? 宇宙の全質量の約25%を占める暗黒物質の正体を垣間見ることは決してできない定めなのか? 今春,この憂鬱な物語に希望の光が差した。ここ数年で最も興味深い手がかりが見つかったのだ。それは暗黒物質どうしが相互作用することを許す新種の「力」が存在する兆候だ。暗黒物質がどんなタイプの粒子からできているのかを説明するのに寄与するだろう。 暗黒物質の動きに遅れ この手がかりは「エイベル3827銀河団」を観測するなかで見つかった。同銀河団