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ブックマーク / kaikaji.hatenablog.com (116)

  • 中国と「ドルの罠」 - 梶ピエールのブログ

    http://www.voxeu.org/index.php?q=node/3551より。 この論説の著者、Domingo CavalloとJoaquin Cottani(わたしはどちらも知らんかったが)によれば、中国などの新興国が保有するドル資産価値の下落リスクを避けるために為替介入を行い、結果としてさらに外貨準備を溜め込んで過剰流動性を生じさせている問題(「ドル・トラップ」問題)について、今のところ有力な二つの立場があるという。 1つ目の立場は、4月に行われたG20で中国政府により提案された(主要な論者は周小川・人民銀行行長ならびに余永定・社会科学院世界経済政治研究所所長)、新興(債権)国が外貨準備をドル建てからSDF建てに切り換えることにより「ドルの罠」から逃れようというもので、フレッド・バーグステンなどが支持を表明している。具体的には、IMF改革を通じてSDR建ての債券を発行できる

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  • 経済学的思考のすすめ - 梶ピエールのブログ

    一連の北朝鮮関連の報道については個人的に違和感を感じることばかりだが、中でもおかしいと思うのが、北朝鮮政権の一連の行動に関する「意図」については盛んに分析・憶測がなされる一方で、それに反応する日政府の「意図」についてはほとんど問題にされない、という点である。 ゲーム理論やその応用分野である制度分析をもちだすまでもなく、多くの人は「政府」が常に国民全体の利益を最大化するために公平な意思決定を行う、という前提がいかに怪しいものか、感覚として理解しているはずだ。政府は常にそれ自体の利害を追求して行動するし、そういった政府の私的利益の追求を防ぐための制度的な枠組みが不十分なもとでは、往々にして選択される政策のゆがみ、すなわち「政府の失敗」が生じる。これは北朝鮮の政府であろうがアメリカ政府であろうが変わらない。 現に、日においてもこと景気対策に関しては、麻生政権の「隠された意図」「私的利益」を指

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  • 地に足をつけよう - 梶ピエールのブログ

    農民も土も水も悲惨な中国農業 (朝日新書) 作者: 高橋五郎出版社/メーカー: 朝日新聞出版発売日: 2009/02/13メディア: 新書購入: 1人 クリック: 28回この商品を含むブログ (7件) を見る これも草思社的なセンスの(しかし草思社ほどキレがない)タイトルだなあ。しかも朝日新書の中の一冊ときた。やれやれ。 しかし書の内容はまじめな農業経済研究者が、地道な現地調査をもとに書いた文字通り「地に足が着いた」もの。特に農薬漬けになっている状況を「人糞を熟成させずに生のまま肥料として使っているからだ」「農村に入った研究者はまず土を自分の手で触ってみるべきだ」といった指摘は農業の専門家の発言として傾聴に値する。 書内容については、基的に賛同するところと、ちょっとついていけないところの両方がある。賛同できるところは、「所有制」の大きな変化の中で、中国農村に生まれつつある新たな格差の

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  • ゆるいインド - 梶ピエールのブログ

    今月の半ば、調査のため1週間ほどインドを訪れていた。写真はチェンナイに近い、繊維産業の集積地にある輸出用アパレル工場のものである。インドの繊維産業は一般に、雇用保護を最優先にした労働政策のため企業側にとって設備投資のリスクが大きく、一般的に規模の経済が働かないような零細な業者が多いとされ、特に中国に比べた場合の生産性の低さが主流派の経済学からは指摘されてきた(たとえばこちら)。また、左派の側からは、綿花栽培における農薬使用、あるいは製糸工程でのワーカーの健康被害への対策の甘さといった劣悪な労働条件が批判にさらされてきた。 今回の調査でも確かに、そういう側面はあるということは感じた。 ただ、同時に、中国の工場にはない面白い点もいくつか発見した。たとえば、中国では考えられないくらい男性のワーカーが多いことだ。むさくるしいいい年をしたインド人のおっさんたちがミシンや服を折りたたむ仕事をしているの

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  • 確かにバラマキですが、それが何か? - 梶ピエールのブログ

    春節明けの中国が各地ですごいことになっているらしい。産経新聞の報道より。 【上海=河崎真澄】定額給付金問題で揺れる日を尻目に、中国浙江省の景勝地として知られる杭州市は、国内旅行客の呼び込みのために「消費券」の配布を発表するなど、あの手この手の給付金作戦を展開している。 杭州市は13日、総額約800万元(約1億700万円)分の消費券を近く、上海市内のショッピングセンターなどで通行人に無料配布する異例の作戦を明らかにした。杭州市内の飲店や商店、観光地などで使用できる100元(約1340円)分のクーポンだ。 杭州市は上海市内から高速道路で2時間ほどの距離にあり、中間層の多い上海から観光客を招き寄せる“呼び水”にする。上海以外でも江蘇省の都市部でクーポンのばらまきを検討している。 さらに杭州市では、市職員幹部を対象に給与の5〜10%を消費券で支給する構想や、市職員が語学などの能力を伸ばすための

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    nagaichi 2009/02/15
  • 革命と大衆動員 - 梶ピエールのブログ

    中国社会と大衆動員―毛沢東時代の政治権力と民衆 作者: 金野純出版社/メーカー: 御茶の水書房発売日: 2008/10メディア: 単行購入: 1人 クリック: 4回この商品を含むブログ (4件) を見る 書は、どちらかという総力戦を説明する概念装置であった「大衆動員」をキーワードとして、毛沢東時代の中国における政治変動、なかんずく文化大革命というきわめて特異な現象の発生を説明しようとした力作である。 中国革命の初期の段階において、農村での中国共産党の活動が重要な役割を果たしたことは言うまでもない。しかし、いったん中華人民共和国が成立すると、社会主義国家建設の重点は次第に都市に移っていく。 そのような人民共和国初期の大衆動員は、「企業丸抱え社会」を通じた都市住民への利益誘導とイデオロギー教育によって共産党政権を磐石にすることを目標に行われた。しかし、そういった「上からの」大衆動員は次第に

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    nagaichi 2009/02/11
  • 減少する中国の外貨準備 - 梶ピエールのブログ

    中国が追加的な利下げと預金準備率の引き下げを行ったことは日の各メディアでも報じられた。その中国の外貨準備残高(ドルベース)が、10月には前月に比べて約150億ドル減少しているらしい。 http://www.caijing.com.cn/2008-12-23/110041729.html これをみれば、一時期ささやかれた「中国政府は輸出企業を救済するために元安介入を行っている」という憶測が根拠のないものである、ということは明らかになったといってよい(参照)が、『財経』の記事によれば、外貨準備の減少から直ちに中国国内市場からのキャピタル・フライトが生じていると断定はできず、外貨準備の中の一定割合を構成しているユーロの減価、SWFによるアクティヴ運用による含み損、ならびに今年八月の「外国為替管理条例」の改正などがその原因として考えられる、という。特に外貨準備高に閉めるユーロの比率を中国政府がど

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    nagaichi 2008/12/25
  • 2008年度アジア太平洋賞受賞作品 - 梶ピエールのブログ

    台湾政治中華民国台湾化の戦後史 作者: 若林正丈出版社/メーカー: 東京大学出版会発売日: 2008/06メディア: 単行購入: 1人 クリック: 7回この商品を含むブログ (9件) を見る 検証 現代中国の経済政策決定 作者: 田中修出版社/メーカー: 日経済新聞出版社発売日: 2007/09/07メディア: ハードカバーこの商品を含むブログ (2件) を見る 中国を追われたウイグル人―亡命者が語る政治弾圧 (文春新書) 作者: 水谷尚子出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2007/10メディア: 新書 クリック: 48回この商品を含むブログ (22件) を見る 不平等国家 中国―自己否定した社会主義のゆくえ (中公新書) 作者: 園田茂人出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 2008/05メディア: 新書購入: 1人 クリック: 29回この商品を含むブログ (22件) を

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    nagaichi 2008/11/14
    『不平等国家中国』は買ったけど積ん読中。
  • 積極果敢な中国の政府と中央銀行 - 梶ピエールのブログ

    このたびの中国の4万億元の経済対策については、日のネット界ではなんといっても津上俊哉氏の分析が詳しいが、こちらの方でもいくつか重要だと思える点をメモしておきたい。まず強調しておくべきなのは、中央銀行が眠ったまま機能していないどこかの国とは異なり、今回の決定が大規模な財政出動と金融緩和のポリシー・ミックスである、ということがはっきりしている点だ。このことは温家宝首相が内需拡大策を打ち出してから間髪を入れず、周小川中国人民銀行行長が、年内の利下げも視野に入れた金融緩和によって財政的な刺激策をサポートするという姿勢を明確に打ち出していることからも明らかである。このような金融当局の積極姿勢を裏付けるように、11日には国債レポ市場における公開市場操作を通じて500億元規模という大規模な流動性供給が行われたと伝えられた。同時に、短期金融市場における流動性供給の手段として新たに入札型ターム物貸出(TA

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    nagaichi 2008/11/13
  • 農村土地改革についてのまとめ - 梶ピエールのブログ

    このところ中国不動産関係のエントリが続いているので、ついでにもう一つ。 http://www.nikkei.co.jp/china/news/index.aspx?n=AS2M1900C%2019102008&ichiran=True&Page=4 【北京=尾崎実】中国共産党は19日、12日に閉幕した第17期中央委員会第3回全体会議(三中全会)で採択した「農村改革の推進における若干の重大な問題に関する決定」の全文を公表した。決定は農民に対し、農地使用権の売買を認めることを盛り込んだ。農地の集約を促し、大規模な農場経営を可能にすることで農業の効率化と所得水準の底上げを狙う。 1949年の建国以来、農民による農地の集団所有を基としてきた中国にとって、農地使用権の売買自由化は事実上の「農地私有化」に向けた動きを加速させる転機となりそうだ。 決定は農地使用権について「貸し出し、交換、売買、株式

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    nagaichi 2008/11/03
  • 金融危機の中の中国不動産市場 - 梶ピエールのブログ

    このところリアル学会の「お祭り」の実行委員にかかりきりになっていたせいで、昨今のリアル世界経済の動きはぜんぜんフォローできていないし、またネット上の祭りの動向にもついていけてないので、とりあえずリハビリのつもりでエントリしてみます。 さていくつかのブログで紹介されているように、IMFが世界的な不動産市場の下落についてのレポートを発表している。 http://www.imf.org/external/pubs/ft/survey/so/2008/NUM100808A.htm その中に中国のデータはフォローされていないのだが、中国アメリカ住宅価格を対比させた以下のブログ記事ならびに引用されているグラフがちょっと面白かったので紹介したい。 http://sun-bin.blogspot.com/2008/10/economist-has-interesting-review-on.html

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    nagaichi 2008/10/17
  • 緊急更新その2 - 梶ピエールのブログ

    前回もそうですが「緊急」というのはあくまでも「なかなか更新する気が起きないが、このネタぐらいは押さえておくか」という個人的な気分を表したものであり、世間的な意味は全くありませんのでご注意下さい。 http://www.php.co.jp/magazine/voice/ この雑誌は、巻頭におかれた円高と成長との関係がどうの、というネタとしか思えない論考にどうしても目が行ってしまいがちである。が、ここで触れておきたいのはそのことではなくて・・・同誌の比較的目立たないところ掲載されている水谷尚子氏の「ウイグルの襲撃事件はテロか」は、この人が書いたウイグル問題に関する論考の中でも、現状に対する見通しのよさという点では出色のものである。断言するが、今後この問題を語ろうとする者は、最低限ここに書かれているようなことは押さえておくべきである。また、そのこととは別に、以下のような水谷氏の姿勢には、あらため

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    nagaichi 2008/09/12
  • 「東アジアの奇跡」再論 - 梶ピエールのブログ

    先日、スカパーで契約している香港の鳳凰テレビで、改革開放が始まったころの1980年代、深センの委託加工工場で働いていた当時の「打工妹(出稼ぎの女子労働者)」をスタジオに呼んで、人気キャスターの魯豫が当時の苦労話を聞く、という番組をやっていた。 http://wsx5568.blog.enorth.com.cn/article/351489.shtml もちろん、番組に出ていたおばさんたちのように、その後そこそこ成功して当時のことを笑い話として語れるような「余裕」を身に着けられたのは、ほんの一部の「打工妹」に限られるだろう。しかし、一部の中国の中間層にとって、労働集約的な工場でのガムシャラな労働経験を、外資による「搾取」の象徴というよりも、レトロな「懐かしい過去」として消費する感覚が生まれつつことを予感させるものだった。こういう試みがこれからも出てくるのか、注目したい。 さて、委託加工工場と

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    nagaichi 2008/07/26
  • 都会の鼠と田舎の鼠 - 梶ピエールのブログ

    K・A・ウィットフォーゲルの東洋的社会論 作者: 石井知章出版社/メーカー: 社会評論社発売日: 2008/04メディア: 単行 クリック: 5回この商品を含むブログ (6件) を見る 間違いなく、マルクスは中国やインドを、西洋的合理主義とは異質な論理の支配する、言い換えれば『資論』の分析がそのままでは通用しない特殊な世界として考えていた。マルクスがインドが一旦イギリスの植民地にされたことを、「進歩」として評価していたという話はあまりに有名だ。それを現在の価値基準から、「アジア人蔑視」として批判することはもちろん可能だろう。しかし、ことはそう簡単ではない。 マルクスにおけるアジアの特殊性の認識を端的に示すのが「アジア的生産様式」という概念である。ただ、このような考え方は、マルクスの理論が来当てはまらないはずの旧ソ連や中国共産党にとっては当然非常に都合が悪いわけで、実際に共産党が政権

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    nagaichi 2008/07/20
    「アジア的生産様式」「アジア的専制」の差別的問題。でもよ、中国史を囓ってると、「封建制」なんかより「アジア的専制」で理解したほうが実際的だとオレ思ったりもするのよ。
  • 園田茂人『不平等国家 中国』 - 梶ピエールのブログ

    不平等国家 中国―自己否定した社会主義のゆくえ (中公新書) 作者: 園田茂人出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 2008/05メディア: 新書購入: 1人 クリック: 29回この商品を含むブログ (22件) を見る 政策決定にも影響力を持つ中国の社会学者たちと広い親交を持つ筆者が、豊富な一次データを駆使して現代中国社会の階層分化を分析。とりあえず重要と思われる点をメモ。 ・中国社会の「不平等」の象徴としてとりあげられることが多い都市の出稼ぎ労働者だが、実際はそれまでの農村での生活に比べれば確実に暮らしがよくなっているので、それほど不満は感じていない。したがって彼(女)らの生活への不満から何らかのカタストロフィーが生じる可能性は非常に低い。 ・しかし、出稼ぎ労働者も都市生活が長くなればなるほど、具体的な不満を募らせる傾向にある。 ・都市住民の中では、低所得者層の方が外来人口の流入に対

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    nagaichi 2008/06/08
  • 中国との貿易は「格差社会」をもたらすか - 梶ピエールのブログ

    表題のテーマをめぐって、興味深い論争がアメリカ経済学者の間で行われているようだ。 元ネタであるこの記事によると、「中国との貿易(つまりは経済のグローバル化)は国内格差を拡大させる」という立場の代表的な論客としてあげられているのが誰あろうPaul Krugmanである。彼の最新の Brookings paperによると、1990年代以降の、中国のような低賃金労働の経済との貿易の急激な拡大がアメリカ国内の熟練労働者と単純労働者との賃金差の拡大をもたらし、国内の不平等を拡大させるという主張が展開されているという。この結論自体は国際経済学の標準理論であるストルパー=サミュエルソンの定理からも導かれるもので、むしろ経済学的にはオーソドックスな見解だといってよい。 こういった見解に対する反論が展開されているのが、Christian Broda と John Romalisによるこの論文である。 ちな

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    nagaichi 2008/05/04
  • 皇甫平、チベット問題を論ず - 梶ピエールのブログ

    今日気がついたのだが、中国リベラル勢力を代表する経済誌『財経』のウェブ版になんと「皇甫平」名義によるチベット問題を論じる論考が掲載されていた。 http://www.caijing.com.cn/todayspecx/cjkx/2008-04-30/58921.shtml http://www.caijing.com.cn/todayspecx/cjkx/2008-04-30/58925.shtml 「皇甫平」についてはこちらをご覧下さい。 ざっと目を通したところ、同論考のスタンスは以下の通り。まず3月のラサその他での騒乱に関しては完全に政府側の対応を支持しているものの、カルフール・ボイコットに代表される西側に対する排外的ナショナリズムの盛り上がりには強い警戒を示している。また、大躍進・文革期における少数民族への迫害を率直に認め待遇改善に尽力した胡耀邦の路線を高く評価し、同時に政府のチベ

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    nagaichi 2008/05/02
  • 「可視化される他者」とナショナリズム - 梶ピエールのブログ

    例えば、大澤真幸氏は、ナショナリズムの「起源への関心」について次のように述べている(『ナショナリズムの由来』377ページ)。 ナショナリストは、ネーションの起源を、ネーションの領域からいくぶんかずれた外側に―いわば隣接的な外部に―見出す傾向がある。ナショナリズムは「起源」についての強い関心を伴う、ということについては既に述べておいた。その「起源」は、しばしば、ネーションの領土の外側に、つまり外国に位置づけられるのである。「日人」の起源が「南島」にあるとか、ユーラシア大陸の「北方騎馬民族」にある、といったような理説が、その例である。こうした傾向は、時に、国境紛争を誘発する原因となる。起源となる聖地が外国に奪われているかのような感覚を生むからである。 現在チベットが中国(人)のナショナリズムをかきたてているかのように思えるのは、大澤の言うように「隣接的な外部」であり、それゆえに歴史的に諸外国

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    nagaichi 2008/04/29
  • 長野からのメッセージ - 梶ピエールのブログ

    といっても聖火リレーともチベットとも全然関係ない話ですみません。『信濃毎日新聞』で長期連載されている「石原吉郎 沈黙の言葉」という記事(写真)の紹介である。 記事を書いている畑谷史代さんはこの仕事の前にはハンセン病患者への聞き取りなどを手がけてきた硬派かつ社会派の記者さんで、それがなぜ今石原吉郎なのか、ということは連載記事を読んでいけばわかる(多分)。実は僕もちょっとだけ協力していて、以前このブログに書いた文章id:kaikaji:20050616が目に留まったのでインタヴューしたい、という電話があったのがもう一年以上前になる。インタヴューのときはバークレーに滞在していたとき、イラク戦争での米兵の犠牲者が2000名を超えた時にニューヨークタイムズが反戦のキャンペーン記事を汲んだのを目にしたときのなんとも「嫌な感じ」などについて話をした。 『望郷と海』などの石原のラーゲリ体験の手記は、197

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    nagaichi 2008/04/25
  • 『盲山』 - 梶ピエールのブログ

    この作品は、先月中国に行ったときにDVDではなくてVCDを書店で買ってきたものである。このことからも分かるように、この作品は中国国内で上映された、れっきとした当局の検閲済みの作品である。しかしその衝撃度は上映禁止になった作品に勝るとも劣らない。監督の李楊(リー・ヤン)についてはこちらを参照。 中国における人身売買といえば、昨年明らかになったレンガ工場での児童労働が有名だが、若い女性が誘拐されて風俗店や農村などで働かされるケースも多いといわれている。これは「いい働き口がある」と騙されて誘拐され、ある農村に「嫁」として売られてきた女子大生についての映画である。 この作品は綿密な取材に基づいてつくられているというだけあって、その描写はリアルである。最も衝撃的なのは、それまでの映像における農村のイメージを徹底的に覆している点だろう。それまで中国映画で描かれる農村というと、『初恋の来た道』とか『山の

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    nagaichi 2008/04/15