吹きすさぶ不況風の中、外を出歩いてもロクなことがない。だから消費者は自然と財布の紐をぎゅっと締め、カネを使わないよう家に閉じこもる。しかし、自宅だからといって、必ずしも安穏と過ごせるわけではない。掛かってくる電話を取れば、受話器の向こう側から甘い勧誘の声。「金(きん)の先物を買わないか」「都内のマンションへの投資がおトクですよ」「和牛出資はどうですか。エビ養殖ファンドはいかが」・・・。 そしてチャイムが鳴り、宅配便かと思って玄関のドアを開ける。今度は、執拗な訪問セールス。「長持ちする特製物干し竿はいかが」「ケーブルテレビに契約するなら今ですよ」「住宅リフォームをぜひ」「呉服を買って幸運を」「ふとんを新調して生活を豊かに」・・・。巧みなトークが続く。お願いしても帰ってくれない。 年老いての一人暮らしと知ると、喫茶店に誘ってくる。ついには、「お前に使ったこの貴重な時間どうしてくれる」と凄まれる