文字にすれば、このつかみ所のないもやもやとした暗い気持ちにも整理がつくかもしれないとの期待を込めて、心の暗部を覗いてみる。 物心ついたときには、父親に褒められることが不快だった。 照れていたのではない。悲しいような、つらいような、屈辱的なような、とにかく、これは嫌な感情だ。 小学校で、たびたび音読の宿題が出た。教科書の指定された箇所を、親の前で声に出して読み、その感想と日付を、専用の表に親に書いてもらって、先生に提出する。当時、そういう機会では空気を読まずにはしゃぐタイプの子供だった私は、必要以上に大袈裟に演劇的に抑揚をつけて、大きな声でハキハキと音読していたと思う。 父は、私が音読をすると、とてもよく褒めてくれた。 「天才だ。」 「すごいね~。」 「上手だなあ。」 それが本当に不快で。 なんだかひどく屈辱的な気持ちになった。だから私は音読の相手は母に頼んでいた。でも、父は仕事が終わるのが