海が嫌いだ。 いや、海自体は嫌いではない。 小さい頃、父と行った地元の海を思い出す。誰もいない、だだっ広い波の上を浮き輪でぷかぷか浮いてみたり、砂場に埋まっているアサリを片っ端から掘ったりするのは好きだった。 声が届かなくなるくらい沖の方まで泳いでいくと、心配してくれた父が迎えに来てくれるのも好きだった。 そう、わたしは海が好きなのだ。 私が苦手なのは海ではなく、海に遊びに来ている人々。 愛読書である「女性セ●ン」で読んだのだが、海水浴場周辺に住んでいる地域住民の方たちは、毎年海水浴客から大迷惑を被っているのだという。 ゴミを敷地内に投げ入れられたり、玄関前で嘔吐されたり、勝手に庭に入って来て排尿されるなどの例があるらしい。 とんでもない話だ。 とかく海はなぜかそういう人たちが集まる傾向にあるようなので、関東の海には行こうとも思わなかったし、そういう私を海に誘う人もまたいなかったのである。