腰の引けた対中外交、慰安婦像乱立の大罪、北方領土交渉の失敗、米国にNOと言えない日本......。昨年末に外務省を退官した前駐豪大使の山上信吾氏は、新刊の『日本外交の劣化 再生への道』で、自身が関わった事案も含め、近年の日本外交の劣化ぶりを赤裸々に綴っている。「本書は私の遺言である」という山上氏はなぜ古巣に鉄槌を下す決断をしたのか? 同書より一部抜粋して山上氏の真意を紹介する。 ◆◆◆ 2020年末、私は豪州のキャンベラに日本大使として赴任した。それまでの「外務官僚」から「外交官」へとギアを完全に切り替えた。年々日本にとっての重要性が増しているオーストラリア。そこでの日本大使は実にやり甲斐に満ちていた。南半球で「一隅を照らす」との気持ちで、2年4か月間、120パーセントの力で駆け抜けた。人脈構築、情報収集、対外発信の三面にわたり、一球入魂の気持ちで毎日全力投球した。その模様は、昨年7月に出