日本では第二次世界大戦中に、いわゆる「日本的製鉄法」と呼ぶ騒動があった。 「たたら製鉄」の事ではない、詐欺事件の事である。 ある発明家が江戸川上流で実演した詐欺に、ある海軍工廠の材料部長が騙され、東條首相までもが議会でこれを演説し、当時の政府の政策のひとつにまでなったのだ。 これは砂鉄ならば我が国に無尽蔵にあるので、これは大発明だということになり、それに最初にひっかかったとされるのが、海軍の某廠(ショウ)の閣下で材料部長の地位にあった人であった。 何でも江戸川の上流の某所とかで、実際にやらしてみたら、立派な鉄が出来たと言うのである。 中谷宇吉郎は「砂鉄とアルミニュウムとを混ぜて盛り上げ、その上に土をかぶせて孔をあけ、その孔から或る薬液を注ぎ込んで火をつければ、それだけで立派に精錬が出来るので、あの厖大な鎔鉱炉などを造るのは全く馬鹿げた話だ、これで今度の戦争に勝てる」という傑いご機嫌だという