著者のエムズリーさんはロンドン大学で研究・教育に当たった後、科学ライターという職についているそうです。 ”化学物質”という言葉はもちろん原著では使われていないはずですが、日本語では本来の意味を離れて独特の語感で使われています。訳者の元東京大学教授(現東京理科大)の渡辺正さんは当然それを狙ってこの書名にしたのでしょう。 長らく化学関係に近いところで仕事をしてきましたので、私も”化学物質”という言葉は通常は使いません。”物質”というのとほとんど意味も変わらないため特別に”化学”をつけるという意味も無いためですが、この辺のところは化学にあまり縁の無い(ということは知識も無い)一般の方々には理解しにくいことのようです。 この辺の事情は欧米でも似たようなものらしく、本書も”化学物質”という言葉に過剰に反応する人々にその利点欠点の双方を解説する形式となっています。 例えば第1章は化粧品などに使われる物