ちづかマップ [作]衿沢世衣子[掲載]2010年1月31日[評者]山脇麻生(ライター)■地図を携えて街へ出よう 地図を持って出かけるのは楽しい。何より、「いま自分はこの辺りにいるんだな」という実感が持てるし、万が一、道に迷っても途方に暮れないで済む。時間があれば、目的地の周辺に変わった名前の公園や坂道を見つけて回り道してもいい。東京の風景は均質化しているようでいて、住宅街に突如ハッとするような景色が噴出したりする。そんな街の、新たな風景に気付かせてくれるのが、古地図好きの16歳・鹿子木千束。連載時の「尋ネ人探偵」を改題、加筆修正した本書の主人公だ。 尋ね人探しを生業とする祖父に代わり、千束が依頼を受けたのは、“少女期に親の都合で離れ離れになり、その後10年もの間、消息が分からなくなってしまった友達”や、“子供のころに天ぷら屋で見た1枚の絵”。誰かを、もしくは何かを探しながら、実在の土地をゆ