沼野(以下 ぬ):沼野です。今日は私が進行役でウラジーミル・ナボコフ『ロリータ』の新訳を手がけられた若島さんにいろいろお話をうかがいたいと思います。よろしくお願いします。『ロリータ』が若島さんにとって非常に重要な作品であるということは、今までもいろいろなところでお書きになったり話をしておられましたが、今回翻訳されることになった経緯といった辺りからお話をお願いします。 若島(以下 わ):若島です。実際に翻訳のお話をいただいたのは1年前くらいですね。『ロリータ』の版権については昔からいろいろと噂があって、出版社が持っているのか、訳者が持っているのか、どうなっているのか実際確かめてみないと分からなかったんです。ですから個人的には『ロリータ』を訳してみたいという気持ちは以前からありましたが、現実問題として翻訳出来るかどうか分からなかったですし、まさかこういう話をいただけるとは本当に思っていませんで