印刷 メール 〈時の回廊〉谷川俊太郎「二十億光年の孤独」 宇宙と向き合う 谷川俊太郎=郭允撮影 「万有引力とは/ひき合う孤独の力である」「宇宙はひずんでいる/それ故みんなはもとめ合う」。谷川俊太郎の第一詩集『二十億光年の孤独』は、宇宙とひとり向き合う少年の心を、みずみずしく表現した。詩語が新鮮で、透明な叙情がある。詩作60年を超える国民的詩人の原点といえる。 ◇ 宇宙に行きたくありませんか、とよく聞かれます。そんなに関心はありませんね。天文少年ではなかったし、星の名前もよく知りません。僕の場合、完全に想像力の中の宇宙なんです。二十億光年というのは、その頃観測できた最も遠い星雲までの距離です。 思春期になり、自分は何者なのか、どこにいるのかと悩みました。それを僕は社会的な文脈ではなく、宇宙的な文脈で考えました。一個の生き物として宇宙の中にいる。これが座標の基点です。この感覚は今もあります。