急速な進化を遂げるAIは、仕事の生産性を飛躍的に向上させ、大きな経済効果を生むという期待が世界中で高まっている。だがMITの経済学教授ダロン・アセモグルは、AIがもたらす変化は「控えめなもの」だと指摘し、無批判の歓迎姿勢に疑問を投げかける。 欧米で論争を呼んでいるアセモグルの研究を、本人が解説する。 大手IT起業家や専門家、研究者によれば、人工知能(AI)は仕事の生産性を前例のないほどに高め、世界を一変させるという。 地に足のついた予測をする人もいるが、AIを搭載したマシンがあらゆる仕事を肩代わりし、人類が無限の繁栄を謳歌する時代が到来すると見る向きもある。たとえばゴールドマン・サックスの推計によれば、生成AIは今後10年で全世界の国内総生産(GDP)を7%押し上げるという。 こうした予測は、現実に即しているのだろうか? 筆者が最近発表した論文でも触れた通り、AIの未来は予測よりはるかに不