約600ページの大著である。だがこの本は、関東大震災時の朝鮮人虐殺について知りたい人にとってのスタンダードになるだろう。 第一に、あのとき、関東各地で起きていた出来事を、いわば網羅的に伝えているからだ。四ツ木橋、神保原村、習志野、横浜、福田村、藤岡、逆井橋…。さまざまな場所で起きた虐殺の経緯がつづられている。 第二に、この本は、虐殺の「現場」を伝える「ルポ」になっている。直接の取材ができない100年前の出来事を「ルポ」として伝えるために、安田は大量の資料を読み込み、その中に分け入って、現場を想像しようとする。