天津市郊外にある経済技術開発区。トヨタ自動車、パナソニック、キヤノンなど日本の大手製造業の工場が数多く進出している巨大な工業団地の一角に、日本酒好きの駐在員たちの憩いの場となっている和食店「古狸庵」がある。 落ち着いた雰囲気の店内では、京都出身のオーナ・シェフ、古江進二郎さんが腕によりをかけて味も見た目も繊細な日本料理をふるまってくれる。刺身や焼き物に使う魚介類の多くは、日本から空輸された新鮮なもの。野菜類は地元産だが、古江さんがひとつひとつ吟味したこだわりの素材ばかりだ。 この季節、天津は昼間でも気温2~3度の寒さ。一日の仕事を終えた後、古江さんの料理を肴に飲む熱燗は、日本酒党にはたまらない。ここが中国であることを忘れさせるような、ほっとするひとときだ。 天津で醸されるぜいたくな純米酒 そんな古狸庵では、カウンター席の向かい側の棚に「朝香」という見慣れない銘柄の酒瓶がずらりと並んでいる。