ゼミの卒業生の結婚式でスピーチをするのは、大学の教師にとっては「仕事の一部」のようなものである。 だから、日程さえ合えば、日本中どこでもうかがって、一席弁じることにしている。 どうしてゼミの教師を結婚式に呼ぶのか、ということをあまりこれまで真剣に考えたことがなかったが、今日スピーチしながら、やはりこれは「観測定点」としての機能ということが主なのであろうと思った。 卒業生たちはのどかな4年間を過ごしたあと、多くは卒業してからはなかなかにめまぐるしい人生の変転を経験する。 住むところが変わり、いくつかの職種を経験し、出会いと別れがあって、そしてある日「めでたく華燭の典を迎えられた」わけである。 はたと立ち止まって来し方行く末について熟慮してみたいという気分にもなろうというものである。 『五万節』だって、「学校出てから十余年」と歌っている。 「学校出てから」というのは、実人生の「起点標識」なので