たとえば寝食を忘れて〈ドラゴンクエスト〉や〈ファイナルファンタジー〉をプレイしたことがある人なら、物語に没入する感覚はおなじみのはず。かつては小説や映画がその種の感覚の主たる供給源だったわけだけれど、没入のリアルさかげんに関しては、到底、ロールプレイング・ゲームの敵ではない。なにしろ、自分で名前をつけたキャラクターが思いどおりに画面を動いてくれるのだから、コンピュータRPGの世界では、「物語を生きる」という言葉が文字どおり現実のものとなる(テーブルトークRPGも事情はおなじ)。で、なんとか活字の世界でも、こういう没入感覚を再現しようと、大量のRPGリプレイや異世界ファンタジーが出版されているわけだけれど、なんかちょっと違うんじゃないかって気がしないでもない。ゲームっぽさ、RPGっぽさを小説にとりいれたところで、しょせん代用品になるだけのこと。本家本元の活字の小説には、もっとべつのアプローチ