その男性は昨年、ふらっと私の眼前に姿を見せた。約580億円の暗号資産(仮想通貨)がハッキングされた「コインチェック事件」で、ハッカーが盗んだ暗号資産を手持ちの暗号資産と交換し、手に入れたとして警視庁に逮捕された大阪市の会社役員(39)だった。 出会いは思いがけない形で訪れた。 自ら記者に近づいてきた男性は逮捕されるまでに複数回、取材に応じました。警察の捜査の様子、盗まれたNEMを交換した手口……。男性が語った一部始終を振り返ります。 昨年11月上旬、私は大阪市内にいた。あるイベントで講演を頼まれ、コインチェック事件取材の舞台裏について話をしていた。講演は暗号資産の業界関係者らの間で話題となっていたといい、多くの関係者らが詰めかけていた。 講演の間、50人近い聴衆の中で前から3列目の男性の存在が気になっていた。話をする私の動きから目をそらさず、熱心に聞いている姿が印象に残った。講演の最後、男