チャイムが鳴ったので玄関ドアを開けたら、高齢の男性が立っていた。 年取っても働かなきゃいけないのは私も同じだから同情はするけど、面識のない相手に顎マスクは印象よくないぞ。 手に持った読売新聞を突き出しながら「新聞はどこですか?」と尋ねてきた。 郵便受けスリットから引き抜いたばかりの朝日新聞を広げて見せた。 「サービスしますよ」とか何とか言ってきたが、相手にしなかった。そのうち諦めて背を向けたので、ドアを閉めた。 その足でアパートのお向かいさんを勧誘しているやりとりが、ドア越しに聞こえた。「どこですか?」「朝日です」中日新聞の強いこの地方では珍しく、2軒続けて朝日なのだ。「読売に変えてもらえませんか」やはり断られたようだった。 読売の拡販員の襲撃を受けるのは、何年ぶりだろう? 一時期かなりわずらわしかった記憶がある。現住所に引っ越す以前だったからもう十年以上も前のことだが、商品券を一枚ずつ手