人生に、意味はないけど、甲斐はある。わたしは、様々な「生きてて良かった」に生かされている(密かに"業/ごう"と呼んでいる)。囚われているから、あゆんでいける。 これに本書も入る。見かけたとき、目を疑って、飛び上がって、それから踊った。「永遠はあるよ、ここにあるよ」に初めて触れた感情や、「それでは最後のお願いです、ボクのこと、忘れてください」を耳にしたときの感覚がよみがえる。物語に呑みこまれ、もみくちゃにされ、撃たれた記憶が戻ってくる。『ONE』『Kanon』の脚本を書いた久弥直樹の、初の長編小説がこれなのだ。 ピンと来ない人向けに言うと、「確定スゴ本」。この人が書いたなら、読む前からスゴ本だと確信できる。ほとんどは死んで評価が定まった作家に対するものだが、生きてる人には珍しい(デビュー作にしてスゴ本は希少)。編集者も分かっているようで、フルカラー印刷のイラストや、ブルーの栞などチカラ入れま