友人が「超絶的に面白い」と言っていたのは、まさしく本当だった。30年ほど前に、初めてドーキンスの利己的な遺伝子を読んだ時の衝撃は、今でも忘れることはできない。すべての生物は遺伝子によって利用される単なる乗り物に過ぎない、というドーキンスの考え方は、30歳になったばかりの僕にとって1つの天啓のように思えたものだった。「攻撃」のローレンツとドーキンスは、しばらくの間、生物学の僕の神様だった。もっとも、二人の主張は異なっているのだが。 ドーキンスは、求愛した時「君の眼は……洗面道具入れ(sponge bags)みたいだ」とつぶやいた父と、金婚式のために「私たちの歩いた道と題した場面と出来事を表した絵」を描いた母との間に、ナイロビで生まれた。この豊かで賢くてユニークなカップルから、ドーキンスは生まれるべくして生まれたと言えよう。子供時代のドーキンスは、「いつも自分に向かって、往々にして意味不明だが