ソール・ライターが人々を惹きつける理由。“見ることの喜び”にあふれた写真今年、日本で2回目となる回顧展が開催され注目を集める写真家ソール・ライター。その作品はなぜ現代の人々を惹きつけるのか? ライターがいたニューヨークで過ごし、アートや写真に関するキュレーションや編集を数多く手がける河内タカが、時代背景から紐解く。 文=河内タカ 写真を撮ることはなにかを探りあてるため。ソール・ライターの静かな生き方 僕ははたしてソール・ライターに会っていたのだろうか。彼の写真を見ながらそうふと思った。なぜならライターが住んでいたニューヨークの場所というのがイースト・ヴィレッジの東10丁目であり、実は僕もそこからわずか数ブロックのところに住み同じ界隈を日々歩きまわっていたからで、記憶の片隅にライターによく似たヨレヨレの帽子をかぶった老人を見たことがあったのだ。 カメラを首から下げたあのときの男性は果たしてラ