今でもふと、夢想してしまうことがある。 他の全てがどうでもよくなるほど、心の底から誰かの生き方に傾倒し、ただそれを追いかけ続けることだけができれば、それはそれで楽だろうなあと、そう思うことがある。 その人の生き方に強い憧れを感じた時、僕らの意識はぎゅっとそれにフォーカスされる。 ああでもない、こうでもないという心の迷いが取り払われて、視界がすごくクリアになったように感じる。 おまけに、憧れの人は、具体的な答えを提示してくれる。 困った時はこんな判断をすればよい、人との付き合いはこうすればよい、出かける時はこんな服装をすればよい、そして誰かを愛するにはこんなやり方をすればよい。 その時に、これまではうすぼんやりとしか見えていなかった自分の進むべき道に光が差して、前へと歩きだす勇気がむくむくと湧きあがってくる気がする。 「憧れの人」は僕らを見知らぬ地平まで、一気に連れていってくれる。 そうなん