『選挙』『精神』などの「観察映画シリーズ」で知られる映画作家、 想田和弘さんによるコラム連載です。 ニューヨーク在住の想田さんが日々「観察」する、 社会のこと、日本のこと、そして映画や芸術のこと…。 月1回の連載でお届けします。 第50回 まな板の上の鹿:観察者が観察されるとき 人さまを観察させてもらってドキュメンタリーを作る僕が、逆に誰かに観察されドキュメントされたなら、いったいどんな気持ちになるのだろうか。 そういう疑問を、好奇心とも恐れともつかぬ感情とともに、長いあいだ抱いてきた。だが、本腰を入れて僕の仕事を観察しようという人は、なかなか現れなかった。 去年の暮れまでは。 いや、今までにもそういう申し出は何度かあった。しかし僕はドキュメンタリー映画を作る際に、予定を作らない。何が撮れるのかも、いつ映画が完成するのかもわからないまま、行き当たりばったりで撮影を進めていく。だからそんな僕