私はただの地味な、真面目な、あんまりよう喋らんけどひとに気ばっか使ってる事務員で、途中で正職員にはなったけど、もともと長いことあの法律事務所に派遣で通ってて、途中から直の契約職員になって(所長はほんまはこれ派遣元との契約違反やねんけどなって笑ってた、あのひといい人やったな)、そのあとまた長いこと働いて、四十すぎて正職員にしてもらった。 それだけ君は仕事できるからってみんな言ってくれて、それは私もうれしかった。でも、仕事を「やりすぎる」と、それはそれで、たかが事務員にそこまでされたって言って怒る先生もいて、だからそういうことも仕事のうちで、私は二十年ぐらいここの事務所に勤めるあいだに、気を遣う、ということも含めて、そういう仕事をたくさん覚えていって、だから正職員になったんやと思う。 西天満の、画廊の上の、小さな法律事務所。 南森町で地下鉄をおりて、五分ぐらい西に歩く。なんか高級そうな寿司屋と