緊縮の中枢からガラパゴスへの旅 「3・11以後」の風景を見つめる 評者:片岡大右 ■「三・一一以後」の神話の自明性を解きほぐし、決して断ち切られることなく持続してきたにもかかわらず人びとの意識のなかで周縁化されてきたものを、再び日本の社会的風景の中心に据えなおすこと。ブレイディみかこ『THIS IS JAPAN――英国保育士が見た日本』(太田出版、二〇一六年八月)は、列島の今日と将来にとってこのうえなく貴重でありながら、そこに住まう誰もが――少なくとも十分には――なしえないできた作業に果敢に取り組んでいる。著者がこの必読の取材記をフリーター全般労組/キャバクラユニオンの「ソウギ」への随行記によって始め(第一章)、企業組合あうんと中村光男氏の取り組みに最も多くの言葉を費やすのは(第四章)、まさにそのためである。版元ウェブサイトの充実した特設ページでいわれているように、「知るべき人びと、ほんと