私達の感覚は多くを視覚に頼っている。見ているのは「もの」ではなく光である。つまり眼前の客体はその光の反射を目が捉えることによって初めて認識上の存在となる。当然ではあるが、この私達と世界の関係性は一貫したものではない。近代における解剖学や眼球の研究は宗教から人を中心とした世界観に移行するにあたり重要な役割を果たした。例えば印象派の科学的な側面を今更ここで論じるまでもないが、近代に到り何をいかに表現するかが大きなターニングポイントを迎えたことは単に美術史上の主義や様式の変遷ではなく、もちろん都市や市民社会の変化などを前提としながらも、見える「もの」と身体との関係に現在性が獲得されたことが重要な背景としてあった。 それでは光をテーマに描きつづける北城貴子の現代性とは何であろうか。北城貴子は06から07年に大原美術館で描いた水面の連作と光のあたる庭を描いた作品で脚光を浴びた。その後の作品を当時のも