編集部からの異動をどこかで聞きつけたテレビ局記者が、さっそく銀座の夜に招待してくれた。一昨夜のことだ。同年代でワインを飲みながらの白熱した時間。昨年の「借り」を返すからと、そう言って財務官僚との酒席を設けてくれた。霞が関など右も左も分からない新入りにとって、こういう場が本当にありがたい。わが身の頼りなさをわきまえながら、いつかまた僕が恩を返さないと、と考える。仁義を通しながら「借り」と「貸し」を繰り返すうち、信頼されて情報を取れるようになるーーそれは週刊誌の業界でも同じことだ。 事件現場へ新人を連れ出すときに、最初に叩き込んでおくことが、自分がどんな立場でいるのかを徹底的にわきまえることだ。たとえば、殺人事件の容疑者宅の近所で、呼び鈴を押して回る週刊誌記者が、何をわきまえるべきだろうか。 大事なことは、ぼくらが1冊300円あまりの雑誌を買ってもらって「商売」をしている、という前提事実だ。ぼ