大学に求められている「人材の育成」とは 2015年の6月にドイツのハンブルクで開かれた学長会議には、オーストラリアをのぞく4つの大陸の28カ国39の大学機関から学長が集まった。当時京都大学総長だった私にとっては初めて世界の大学事情を知る機会となり、近年のグローバルな動きの中で世界の大学は日本と同じ問題を抱えていることを痛感させられた。 大学が直面しているのは、高等教育は社会のためにあるのか、それとも個人のためにあるのか、という問いである。 多かれ少なかれ、市民は次世代を担う若者が高等教育を受けるのを支援している。税金から教育費として国、県、市からの運営費交付金になる場合、個人の授業料として直接払われる場合、個人や企業からの投資や寄付金となる場合もある。それは、高等教育が未来の社会を支えてくれる人材を育成するという期待があるからである。しかし、社会とはどの範囲を指すのか、人材とはどういった能