判型としては新書と同じ岩波少年文庫だが、その古い装丁を若い人は知らないだろう。昔はハードカヴァーの箱入りだった。それが1975年ころに箱なし、ソフトカヴァーになったのだが、今のようにカヴァーはついていなくて、しかも独特の手触りの紙を表紙に使っていた。私はあの頃の装丁がいちばん好きだな。中公新書も、昔はビニール装で、その下に帯があって、味わいがあった。今は新書も文庫もどれもこれも同じような、地味な裸体にカヴァーつきで、面白くないなあ。 その岩波少年文庫でマルシャークの『森は生きている』を読んだら、「バカ」という意味の「天然」が出てきたので驚いた。女官長が「わたくしは天然にぼんやりしておりますわ」と言うと、幼い女王が「そうだろうと思っていたわ、天然だとね」と言う(湯浅芳子訳、1953)。女官長は、自然の美しさにぼうっとなっている、と言ったのだが、女王はそれを「元からぼうっとしている」ととったの