福本さんの話を聞きながら思い出した本があります。長年にわたって、臨床心理士として様々な依存症の患者さんと向き合ってこられた信田さよ子さんの『後悔しない子育て』という本です。 同書のなかで信田さんは、「子供に「命令」できない親」について書いています。たとえば、電車のなかで騒ぐ子供を放りっぱなしの親、「シーッ」と周囲への言い訳的にしか注意をできない親や、「や・め・てください」といった「お願い」の言葉でしか指示をできない親に苦言を呈しています。そして、こう続けます 〈虐待じゃないか、嫌われるんじゃないかという、怯えが、お願い口調を生んでいるのです。「命令なんかしてないよ、とりあえず頼んでるんだから、やるかやらないかは決めていいんだよ」と。/これは一見、子どもの主体性を尊重しているようですが、じつは親が責任逃れをしているのです。「〜しなさい」というとき、親は規則や行為を押し付けるのですから、当然押