生き物たちはみな、最期のその時まで命を燃やして生きている──。 数カ月も絶食して卵を守り続け孵化(ふか)を見届け死んでゆくタコの母、成虫としては数時間しか生きられないカゲロウなど生き物たちの奮闘と哀切を描いた『文庫 生き物の死にざま』が刊行された。同書からシロアリの章を抜粋してお届けする。 前回:チョウチンアンコウの男は女に全てを捧げて逝く(2021年12月22日配信) 【写真】雄が雌にすべてを捧げるチョウチンアンコウ ■シロアリの女王の仕事は卵を産むことのみ シロアリという名前であるが、実際にはアリの仲間ではない。アリは昆虫の中では進化したタイプであるのに対して、シロアリは、3億年前の古生代から今と変わらない姿をした「生きた化石」と呼ばれるほどの古いタイプの昆虫である。シロアリはゴキブリ目に分類されていて、アリよりもゴキブリに近い昆虫なのである。 シロアリは、1匹の王である雄アリと女王ア