<すべての道はローマに通ず ―「市民」から「伯爵夫人」そして「女王」へ> 第27回アカデミー賞 助演男優賞:エドモンド・オブライエン ●落日のハリウッド 第2次世界大戦後、社会状況やライフスタイルの変化、スタジオ・システムの解体、赤狩り、TVの台頭など、さまざまな影響によって、アメリカの映画産業が急速に崩壊・変質を遂げていく中、ハリウッドも従来のように楽天的な"夢の工場"たる地位に自足してはいられず、一見華やかで虚飾に満ちたその神話的世界の舞台裏をより醒めた眼差しで見つめて自らの根本を問い直す、自己批評的な映画が相次いで作られるようになった。 「ここはスペインのマドリッドだ、サンセット大通りじゃないぞ」という台詞が劇中で飛び出す通り、この『裸足の伯爵夫人』(1954)も、次第にゴーストタウン化する当時の映画の都の実情を辛辣に描いたビリー・ワイルダー監督の『サンセット大通り』(1950)など